線香花火

数年前にすい臓がんで亡くなった母親と僕の話です。

資格


仕事をしていると、会社からは、目標達成のために
資格取得をするように指示が出される。

IT系の会社では、よくあることだった。
今の会社に入れたのも資格のお陰だと思っている。

昔、資格試験の勉強をしていると、
おっ母が内容は分からなくても
応援していた。試験日の前日の夜は
とんかつを作ってくれた。

会社の指示に従い、試験勉強をしていると
気になったのか、おっ母が話しかけてくる。

「試験受かりそうか?」
「受かるように勉強してんだよ。」
「しっかりやれ!お前なら出来る。
試験終わったらお母さんに連絡しろ」
「うん、分かったよ。」
「ご飯食べちゃえ。」
「行くよ。」

試験が近いとこんなやり取りが繰り返される。
自分の試験じゃないけど、おっ母は気になるようだ。
試験に合格すると、自分の事にように喜んだ。
受験をして、自分で受かりたいのもあるけど、
おっ母が喜ぶ姿がみたいためでもあった。

僕が試験に受かると、その日は飲めないくせに
ビールの試飲缶を取り出し、飲んでいた。

ほんの二口を飲んだだけで、顔を真っ赤にして
喜んでいた。

「お前はやれば出来るんだ!
お母さん信じてた!」

真っ赤になった顔で、嬉しそうに飲めないビールを
啜っていた。その頃の僕は、おっ母が重篤な病気であることも
たまに忘れてしまい、試験に受かった安堵とビールに
酔っていた。